八極螳螂武藝總舘日本分舘

八極螳螂武藝總舘日本分舘　分舘長　野田久貴

　八極螳螂武藝總舘では、1999年年末から新年にかけて国際合宿を行った。既に第五回を数える今回は、台湾高雄市で開催された。毎回この合宿に参加しようと世界中から八極螳螂拳を学ぶ人達が集まってくる。最近、台湾では中部に大きな地震が発生し開催が危ぶまれていたが、南部に属する高雄市はなく無事開催された。

　高雄市には、大師兄（蘇�c彰師父の開門弟子）である尤寛郷先生が分舘長を務める八極螳螂武藝總舘台湾分舘があり、いろいろな手配や事務手続きなどで大変お世話になった。

　ヨーロッパからもオルフレド氏が、スペインをはじめとしてオランダ、フランス、ノルウェイなど各国から大人数を率いて来台した。オルフレド氏は八極螳螂武藝總舘のヨーロッパ方面の総責任者であり、秘書のモニカ氏とともに蘇�c彰師父から大きな信頼を得ている。

　宿泊は高雄市郊外の紫竹寺で、練習は境内で行われた。初日には開会のセレモニーが挙行され、それには蘇�c彰師父の家族も参加された。合宿には蘇�c彰師父の長女である意女亭女史が参加した。意女亭女史は西洋医の資格を取り現在は医者として働いているが、弟の威任氏とともに幼い頃より蘇�c彰師父から武術を仕込まれ、迫力とスピードの威任氏に対し、特に技の正確さと華麗さで意女亭女史は、女性では八極螳螂門随一を誇る。

　練習は十二月二十八日から一月五日まで行われる。セミナーの内容は、螳螂拳は總敵拳、兵器は子母鴛鴦鉞、内功は八極易筋透骨功、対練は劈掛対掌である。八極拳は、各人の進路に合わせ選択される。

　練習は早朝から始まる。朝の気功は、八極易筋透骨功を学んだ。八極拳では、套路自体が内功の役割を担っており、特に小八極拳は初級から上級までの段階が、練法を変えて学ぶことが可能である。今回学んだ八極易筋透骨功は洗髄を練る上級の功法であるが、練法を変えれば初心者が伸筋抜骨を練ることも可能である。

　午前の練習は八極拳と劈掛掌である。昨年と同様、筆者をはじめとする日本分舘の各支部長、教練達が国際教練として、蘇�c彰師父監督のもと丁字八歩拳から八極連環拳まで各班の指導を担当した。

　劈掛掌は基本六掌の対練である。特殊な身法を用いるため使い方の難しい劈掛掌の用法を身につけるのにこの対練は最適であり、必須科目である。

　午後は八卦掌の奇門兵器「子母鴛鴦鉞」である。今回この変わった兵器が選択された理由は、入手困難な子母鴛鴦鉞が、この台湾では容易に入手できることにあった。八卦掌の上級の兵器である子母鴛鴦鉞は、大変複雑な套路であるが、今回蘇�@彰師父は、この複雑な套路をを非常に細かく時間をかけて丁寧に指導された。

　總敵拳は、八極螳螂拳では、上級段階での基本拳路であり、この套路で、各派螳螂の摘要拳を学ぶための基礎を身につける。總敵拳は、合計で４往復する螳螂拳の中では非常に長い套路であり、始めて学ぶ人は覚えるのに苦労していた。

　寺での食事は、本来なら精進料理だが、激しい練習をした身体には、栄養もカロリーも全然足りないだろうと、寺の近くのレストランで、毎回漢方のたっぷり入った料理が用意された。その効果は凄まじく、合宿の間中、全身に気が充満し溢れ出るようだった。

　大晦日の晩は、恒例の年越しパーティが行われた。今年は新千年紀を迎えると言うこともあり、始める前から大いに盛り上がっていた。毎年各国の分舘から集まる弟子が、蘇�c彰師父のために自国の自慢の名酒を持ち寄り、老師の部屋は酒蔵と化す。その種類は豊富で、我々が持参した大吟醸の日本酒十数本をはじめとしてコニャックやウイスキー、ワイン、ラム、ジン、ウオッカ、紹興酒、白酒、高粱酒と世界中の酒が集まる。中には、種類のよくわからない物もある。それらの酒はすべてパーティ会場に持ち込まれ、一晩でほとんどが飲み尽くされた。

　元旦は、早朝から二日酔いのままバスに揺られ、高雄市まで出て、尤寛郷先生の台湾分舘内で拝師式が執り行われた。今回拝師したのは、河合出氏である。

　河合氏は日本分舘名古屋支部所属だが、現在は四日市で同好会を始め数人に教えている。河合氏は日本で行われる合宿や講習会などの行事にはほとんど参加しており海外の合宿も参加している。また蘇�c彰師父が日本に来日したときは、合宿や講習会が終わると後は知らん顔と言う分舘員の多い中、観光旅行やショッピングのお供をしたりと何かと師父の世話をして蘇�c彰師父の信頼を得るに到った。式は滞り無く行われ、蘇�c彰師父の訓話になり、「二〇〇〇年一月一日という千年に一度の特別な日に、八極螳螂拳の発祥地である台湾で拝師式が行われるのは、私にとってもあなた達にとっても大きな意味があるのだ。」と述べられ、さらに「今日この場所に集った者は、先師の霊に選ばれ導かれたのだ。」と話された。講習会と異なり日本の合宿では、古い学生には本来なら拝師弟子にしか教えないことも蘇�c彰師父はどんどん公開しており、その差は技術的には紙一重となりつつある。しかし拝師弟子と一般学生の間には依然として師父との精神的なつながりにおいて大きな差があることも、厳然とした事実である。